契約書で見落としがちな重大ポイント5
基本契約書と個別契約書

契約書で見落としがちな重大ポイント5
基本契約書と個別契約書

契約書で見落としがちな重大ポイント5 基本契約書と個別契約書

基本契約書と個別契約書をうまく使いこなしていますか?

基本契約書と個別契約書のもつ意味と関係性を考えずに活用したり、汎用的な雛形を活用した場合は、思わぬトラブルに巻き込まれることがあります。

この機会に、基本契約書と個別契約書の意義を再確認し、業務を効率化していきましょう。

1.はじめに

会社の業務では様々な契約書を交わしますが、その中で「基本契約書」と「個別契約書」という名称の契約書を交わすことがあります。

これは後で説明するように、特定の取引相手と一定期間、同じような取引を反復継続して行う場合に交わされる契約書ですが、それぞれ、どのような意味を持つ契約書なのか、2つはどのような関係に立つのか、といったことをよく分からないまま作成したり締結してしまったりして、大きなトラブルを招くことがあります。

この機会に改めて基本契約書と個別契約書の性質を押さえてしましょう。

2.基本契約書とは

基本契約書とは、取引の基本的な内容を定めた契約書です。

例えば、機械の製作会社であるA社が、機械製作の特定部品をB社へ発注しているとします。その取引が、月に複数回あるような場合、いちいち契約書を一から作成して取り交わしていては大きな手間となってしまいます。そこで、B社との部品の取引において共通する事項は以下のようなものが考えられます。

    ・契約の趣旨、目的

    ・当事者

    ・製品の納入方法

    ・代金の支払方法と支払期日

    ・契約期間

    ・解除や損害賠償についての定め

基本的な事項(※何を基本的な事項とするかは場合によりけりです)を予め合意しておき、これらの事項は取引のたびに逐一契約書を作成して合意しなくても済むようにするのです。

これが「基本契約書」です。

3.個別契約書とは

個別契約書とは、「個別」に定める契約書のことで、個々の取引で合意する内容を示した契約書のことです。

    「今月は○○という部品を□□個発注」

    「単価は○○円/個」

    「納期は●●月●●日まで」

上記のように、取引ごとに内容が異なる場合の事項を定めた契約書です。

なお、会社や取引によっては、個別契約書ではなく、下記のような題名の書面を交わす場合もあります。

    ・覚書

    ・念書

    ・発注書・請書

こちらは「個別の内容を定めて合意する」という内容であれば、個別契約書と役割は同じです。

基本契約書や個別契約書に限りませんが、書面というのは、題名で法的な効果や役割が決まるわけではありません。あくまで書かれている内容が重要です。

4.基本契約書と個別契約書に、それぞれ何を書くのか

記載については、特に決まったルールや法律があるわけではありません。それこそ会社や取引によって千差万別です。

基本契約書では、上記2で記載した例を挙げましたが、これらは必ず基本契約書に記載するという訳ではありません。

例えば製品の納入においても、今月はA工場に、来月はB工場に、再来月はC工場に、といったように取引ごとに頻繁に異なってくるのであれば基本契約書に書くのはふさわしくありません。むしろ個別契約書に書くべきことです。

逆に個別契約書において書くことが多い「製品の単価」や「納期」についても、全ての取引において共通しており、およそ変更する可能性が低い場合には、むしろ基本契約書に書くべきということになります。

つまり、「全ての取引に共通しており、変更される可能性の低い事項は基本契約書に記載し、逆に取引のたびに変更されることが多い事項については個別契約書に記載する」という方向でそれぞれの契約書を作成することが最も合理的と言えます。

5.基本契約書と個別契約書で気を付けるべきポイント

5-1.矛盾が生じないようにすること

当たり前ですが、基本契約書と個別契約書に矛盾するような内容があってはいけません。

どちらも有効な契約書ですから、相矛盾する内容が記載されていると、一体どちらが適用されるのか、どう解釈して良いのかをめぐって大きな混乱やトラブルを招く原因になります。

5-2.基本契約書と個別契約書で異なる記載になるときは、優先順位をはっきりさせておくこと

上記5-1と同じ趣旨ですが、仮に基本契約書と個別契約書で異なる記載になるときは、優先順位をはっきりさせておくことが大事です。

例えば基本契約書において「代金の支払期日は製品納入後1か月以内とする」という条文があるが、ある特定の取引においては(資金繰りの事情等で)特別に支払期日を2週間以内にしてもらう場合は、個別契約書に「基本契約書の内容に関わらず代金の支払期日は製品納入後2週間以内とする」と記載したり、あるいは予め基本契約書に「代金の支払期日については、個別契約書の内容を優先する。」と記載したりするなどして、優先順位をはっきりさせておかなければなりません。

このように優先順位をはっきりさせておくことも、上記5-1で述べた「矛盾が生じないようにすること」の一環と言えます。

5-3.雛形や書式を使う際は要注意

インターネットや書籍では、基本契約書や個別契約書の雛形や書式が数多く公開されていますので、これらを利用して契約書を作成する場合も多いと思います。

しかし、雛形はあくまで雛形です。世に無数ある契約書の一つの例を示したにすぎず、それが自分達の取引にとってふさわしいものであるとは限りません。したがって、雛形や書式をそのまま流用して使用するのは極めて危険です。

雛形や書式例を利用するにしても、あくまで参考にとどめ、自分たちの取引にふさわしい契約書は独自に作成していくことが必要です。

5-4.基本契約書を定期的に見直し、必要に応じて変更しておく

全ての取引に共通しており、変更される可能性の低い事項は基本契約書に記載し、逆に取引のたびに変更されることが多い事項については個別契約書に記載する」というのが合理的な契約書の記載方法です。

しかし、何が「変更される可能性が高い事項」で、何が「変更される可能性が低い事項」と言えるかは、時の経過によって、会社の業務や人員または経営環境の変化により変わっていくものです。

基本契約書や個別契約書の内容が、会社や会社の業務の現状に即したものになっていないのであれば、適宜見直して変更していくことが重要ですから、定期的に見直していくことが必要です。

6.おわりに

いかがでしたでしょうか。

基本契約書と個別契約書は、うまく使いこなせれば会社の取引をより一層スムーズかつ円滑に行い、大きな利益を生み出すことができる反面、契約書が複数あることによるトラブルが生じる危険性もありますから、特に大きな注意を払う必要があります。

特に基本契約書は、いわばその取引の根幹をなし、取引相手との関係を規律する極めて重要な契約書ですから、上記で述べたように定期的に見直すことが必要です。

そのためには法律の視点が不可欠ですから、是非とも弁護士に相談し、その中で必要な検討や変更を行っていくことが重要です。

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