「あいつが悪い」は通用しない!下請の手抜き工事に対する対処法

「あいつが悪い」は通用しない!下請の手抜き工事に対する対処法

「あいつが悪い」は通用しない!下請の手抜き工事に対する対処法

下請とは、施主(注文主)から業務を請け負った元請業者から、さらに業務を請け負った業者のことを言います。

その下請による杜撰な仕事や、不十分な意思疎通によって手抜き工事がされてしまうことがよくあります。

施主からしてみれば、せっかく終の棲家と思って家を買ったのに、欠陥が見つかったということで、冷静ではいられず、当然、売り主である建築会社に要求を押し寄せてきます。

建築会社としても、信じていた下請に裏切られた上に、施主への対応も迫られ、さらにこれが複数の現場で起きていたら(複数現場を同じ下請けに依頼することはよくある)、社の命運にも関わります。

今回は、こうした下請による手抜き工事が起きる原因や対処法を解説していきます。

下請のやったことは元請の責任

まず、最初に大事な点を申し上げますが、この下請による手抜き工事では、「うちは悪くない、悪いのは下請だ」という理屈は一切通用しません。

元請の立場からすれば、手抜き工事は下請のやったことであり、自分のやった工事ではないのだから、直接施主に下請にクレームなり損害賠償なりしてくれ、という思いがあると思います。

しかし、お気持ちは分かりますが、それは不可能なことです。

理由は、そもそも施主と下請との間には契約関係がなく、下請は施主に対して直接責任を負うことが無いからです。

施主はあくまで元請との間にのみ契約が存在し、その施主から見れば、下請は元請が依頼して工事を行わせた「履行補助者」なのですから、下請の手抜き工事=元請の手抜き工事と評価されるのです。

「履行補助者」とは、債務者が第三者に自分の債務を行わせた場合のその「第三者」を言いますが、いわば債務者の手足となって債権者となって働く以上、その手足がしでかした不始末は債務者本人の責任となるのです。

債務者は施主に対して損害賠償なし瑕疵修補なりの責任を果たした後に、下請に対して損害賠償を請求しうるだけです。

したがって、下請の手抜き工事によって、施主に対して責任を負うのは元請となるので、決して無視できない問題なのです。

手抜き工事が起きる原因

手抜き工事が起きる原因は、それこそ事案によって千差万別かと思いますが、主な原因としては以下の2点ではないでしょうか。

  1. 下請が杜撰な業者だった
  2. 施主と元請との契約内容や施主の要望が下請に伝わっていなかった

まず、①についてですが、建築分野や下請に限りませんが、杜撰な仕事を行う業者や、自分の利益を追求するあまりあえて手抜き工事を行うような悪質な業者がいます。

こうした業者に工事をさせてしまったばかりに酷い手抜き工事が行われ、大きなトラブルに発展することがあります。

また、②についてですが、例えば下請がいない建築工事では、施主と契約した元請が直接建築工事を行いますので、工事内容について齟齬が起きる可能性は比較的少なくなります。

しかし、下請が工事を行う場合、下請は当然ながら元請から業務を請け負っているのであり、施主から業務を請け負っているわけではありません。下請にとって雇い主(契約相手)は施主ではなく、元請なのです。

したがって、下請と元請とで契約した工事内容が、元請と施主が契約した工事内容と齟齬がある場合、下請の行わせた工事が、施主との契約内容に合致していない事態が生じ、結果的に施主から手抜き工事と評価される事態になることがあります。

また、契約後に工事を始めた後も、施主から下請に工事内容の変更を求めても、上記の通り下請の契約相手は施主ではないのですから、直接施主の指示に従う義務は無いのです。

よって工事が施主の要望を無視したまま進められ、大きなトラブルになる事も考えられます。

下請の手抜き工事を予防する方法

では、どうやって手抜き工事を予防していけば良いのでしょうか。

業者の選定は慎重に行う

まず大切なのは、新しい下請を選ぶときはとにかく慎重に判断をするということです。下請はピンからキリまでいます。それまでの現場の評判、孫請けの職人達の評判など、取り得る情報をきちんと集めることが大切です。

下請との契約内容に気をつける

当然ですが、下請も自身の利益のために、元請から工事を請け負っています。となると、例えばあまりに下請に対する請負代金が低い場合、下請が利益を出すために必然的に手抜き工事をせざるを得ない事態も生じてしまいます。

また、下請業者との契約内容がいい加減だったり不明瞭だったりすると、施主と元請業者との契約内容が十分に反映されていないことになり、結果として手抜き工事と評価されてしまうことがあります。

したがって、下請との契約においても、請負代金も適正なものにし、契約書に工事内容を十分かつ正確に記載することが大事です。

下請の管理は徹底して行う

これも非常に大切です。下請に任せきりにしないで、現場は必ず事細かに確認をいれてください。

施主と直接契約を結び、直接やり取りをしているのは元請なのですから、その元請の立場から、施工の状況についてはマメに確認を取り、施主との契約や要望に合致しているかどうか、工事が適切に行われているかどうか、常日頃からチェックすることです。

場合によっては、抜き打ちで、検査を行うこともありだと思います。そうすることによって手抜き工事を未然に防ぐことができます。

例えば壁のかぶり厚などは、できあがってしまうと見ただけではわかりません。信頼していて、もし足りなかったということになると、建物全体の外壁のかぶり厚が不足となった場合には足場を組んでやり直さざるをえなくなりますから、何百万という出費になります。最初の現場であれば、抜き打ち検査で、削って調べるくらいの検査は必要だと思います。

下請により手抜き工事が行われてしまった場合の対処法

まず、何はともあれ、現場に急行する

欠陥だ、瑕疵だという一方が来たときに、一番大事なのは、情報を正確に収集するということにつきます。

まずは現場に行きましょう。実際に見てみないと分からない事は多いですし、簡単な瑕疵であれば、原因や補修方法の見立てができることもあります。また、施主の方達の生活ぶりや、今現在どういう気持ちでいるのかも共有できますから、その速やかな行動が、施主との信頼関係をぎりぎりつなぎ止めてくれることもあるのです。

必要があれば、専門家の判断を仰ぐ

この時、いくら施行したのが下請けだからといって、下請けの技術者だけに任せないで、自分で判断をすること、そして、原因や対処法など不明な点があれば、早急に専門家の指導を仰ぐことが大切です。

自社に部署があればもちろん、ない場合には、あらかじめ、外部に専門家とのパイプを作っておく事が必要です。特に構造計算のプロは必要ですので、こういった専門家と渡りをつけておくことは肝要です。施主が不安に襲われて、建築Gメン等に依頼をするような事態になると、いずれにしても、無傷ではすまなくなります。

何よりも施主の身になって対応しているという事を強調する

窓口は、必ず元請である自社として、誠意をもって当たりましょう。

実際に工事をするのが下請けだからといって、窓口を下請けに任せてはいけません。必ず自社で責任を持って、窓口対応をしてください。それが、施主目線で動いてくれているという安心感を施主に与えます。

もし施主と決裂して、施主が勝手に専門家を入れて勝手に直してしまうような事態になると、そもそも、これは瑕疵なのかという議論に加えて、修理方法、修理費用の妥当性まで争点として浮上してきますので、大変な争いになってしまいます。

その意味で、施主には、建物についてのクレームについては、下請け業者でなく、直接自社にくれるよう、予め念を押しておくことが大切です。建物の引き渡しのときに、アフターケアサービスの方法を細かくパンフレットなどにしてお渡ししておくことが肝要です。

施主は、多くの場合現場にいる下請にクレームや要望を伝え、下請とだけやり取りをしてしまうことがありますが、そうなるとこちらのコントロールから完全にはずれ、信頼関係も失ってしまいます。

施主と下請だけの蜜月にならないように割って入る努力をすることが大事です。

その上で、直せるものはすぐに直す

対処が後になればなるほど、施主の精神状態は悪化します。特に専業主婦がいる場合には、その問題のある家屋に24時間いるわけですから、被害感情は甚大になります。毎日そのことばかりを考えて、悶々としておられるわけですから、後になればなるほど、被害は増大するのです。

損得勘定は速やかに行う

補修するとなれば、まず費用がかかります。しかし、欠陥の状態が甚大で、事案によっては建て替える方が安いような場合も出てきてしまいます。そのような見極めも、初動できちんと道筋を判断しておくことが大切です。

まとめ

以上、お分かりいただいたように、建物は「物」ですが、作っているのも住むのも人間です。血の通った対応をしていけば、必ずどこかで尊重し合える関係が築けます。決裂してしまわないよう、くれぐれも気をつけて、直すものは直して、本当に施主に喜んでもらえる家造りをしていく努力が必要なのです。

法律的な問題・疑問をいつでも、どんなことでもお気軽にチャットでご相談頂けます。
リーガルコネクトでは、ご相談頂いた内容に、原則24時間以内にご回答いたします。

関連コラム

法律的な問題・疑問をいつでも、どんなことでもお気軽にチャットでご相談頂けます。
リーガルコネクトでは、ご相談頂いた内容に、原則24時間以内にご回答いたします。