原因不明の事故について施工会社の責任のみが争われた事例

原因不明の事故について施工会社の責任のみが争われた事例

事故における責任原因が争われた事例をご紹介させていただきます。

事案の概要

【訴訟】 当方被告 一般民事部係属

当方にて建築施工した家屋において、浴室のガラス扉が割れる事故が発生。入浴中であった男児がけがを負ったとして損害賠償を請求される。

一貫して、ガラス扉が破断した原因は不明。原告側の主張では、扉を閉めたとたんにガラスが割れて砕け散ったとの主張。当方では普通に締めて割れるはずがないこと、事故直後駆けつけたときに、男児のおもちゃらしい戦隊ものの模型が床に転がっていたことから、これがガラス扉とドア枠に挟まって、そこに局所的な圧がかかって破断したのではないかとの推測をしたが、どちらにしても真実は解明せず。結局、原告側は、ガラス扉の補修費用に加えて、治療費、後遺症(若干の傷が手に残った)、慰謝料などを含めて500万円あまりを請求して提訴。

上記のとおり、原因が不明であることに加えて、原告側が、施工会社である当方だけを訴え、ガラス製造会社を訴えなかったため、当方の施工の仕方に責任原因があるのかどうかが争われた事案。

結果

なにより争われたのは、当方の施工方法に問題があったかについては、裁判所は結局認定できないとして、和解を勧告。

当方からは、法外な損害賠償に応ずることはできないが、ご縁のあったユーザーがおけがをしたということで、お見舞い金は当初からお支払いしたいと提示していたこと、ガラス扉を付け替え、飛散防止フィルムを貼って、施工したという原告側の主張費用は持つと提案。結局、お見舞い金を含めて金100万円を支払うことで和解が成立。

解決期間

約9ヶ月

解決のポイント1

原告が、ガラス製造会社を訴えず、当方だけを訴えてきたため、争点をきちんと整理して責任論についての合理的な主張を行うことが不可欠となった。具体的には次のとおり。

当該ガラスは、浴室扉に使用可能であったか

この点については、当該ガラス扉を仕入れた販売元からは、特に禁止されたことがなかったため、当方としては、問題視すらしていなかったが、念のため調べたところ、当該ガラスを購入した際の設置方法マニュアルに浴室ドアに使う場合の設置の仕方が詳細に書かれており、これが決めてとなり、むしろ、浴室ドアに推奨されていたことが判明し、使用可能であったことは認定された。

当該ガラスの設置方法を誤っていなかったか

この点については、上記のとおりの設置マニュアルがガラス販売会社から渡されており、このとおりに止められていたことを、現場に残されていた蝶番等の部品から立証できたことで事なきを得た。

飛散防止フィルムを貼らなかったことが過失かどうかについて

当方は、この事故の報告を受けて以来、念のため、浴室にガラス扉を設置する場合には飛散防止フィルムをつけるようにしていたがこのことを原告が攻撃。もともと飛散防止フィルムを貼る必要があったのに、貼らなかったと主張。これについては、当方は事故時にはそのような認識はなく、当然飛散防止フィルムの貼附は、どこの現場でも行っていないことを主張。さらには、メーカーが飛散防止フィルムを義務づけているマニュアルを入手。そこには、飛散防止フィルムを貼らなければならない箇所として、天井などの水平部分、枠のない手すりなど、割れた場合に落下が予想される部分とされており、高さ垂直3メートル以内の扉の場合にはこの限りにないと明言してあったことで、飛散防止フィルムの義務はなかったことを立証、認められた。

解決のポイント2

感情的には行き違ってしまったが、当方は建てた家に責任を持っており、今後も良好な関係を続けていきたいと希望していた。そのため、証拠調べに進んで勝訴判決を勝ち取ることも可能な事案であったが、当初から提示していたお見舞い金をお支払いすること、新しく施工したガラス扉の設置費用を負担することを提案し、和解を切実に希望した。裁判所もこれを支持して原告を説得してくれたため、和解成立となった。

弁護士からのアドバイス

本件は、原告側の方針の立て方が最後まで疑問な事案であった。設置方法にここまで問題があぶり出せない以上、ガラスに内在する問題としか思えず、通常であれば、製造物責任をガラス製造会社に求めるべき事案であるのに最後まで何故そのような方針を立てなかったのか、不明であった。製造物責任の請求場面となれば、立証責任の転換もあり、原告側にはもっと有利な訴訟展開があったのではないかという気がするからである。

しかし原告側は裁判所からこのことを示唆されても、かたくなにガラス製造メーカーを提訴しようとはしなかった。この点から察するに、現場に落ちていた戦隊ものの玩具が、やはりガラス扉に挟まって、ピンポイントに圧が加わったことで破断したのではないかという疑問はぬぐい去れなかった。この点は裁判所も同様であったように思う。

しかしながら、本件はあくまで、施工会社である当方と、施主である原告との問題であり、品確法施行からこっち、長い年数の品質保持義務が課せられている昨今の事情を考える時、施主と今後も良好な関係を残しておくことは、建築業者として訴訟に単に勝つよりも必要な要素であった。そのため、できるだけの譲歩を行って和解にて終了の道を選択したものである。