履行着手後に手付解除は認められるか?

履行着手後に手付解除は認められるか?

違約金請求事件の事例をご紹介させていただきます。

事案の概要

土地の売買契約を結んだ売主が、翻意した買主から決済日直前に「手付解除する」と言われて代金を支払ってもらえなくなりました。売主は代金を支払ってもらうよう買主を説得しましたが、聞き入れられず、やむなく債務不履行を理由として契約を解除し、合わせて違約金を請求しました。しかし相手は「手付解除したのだから代金を払わなくても債務不履行ではない」などと言って違約金の支払いも応じませんでした。

解決ストーリー

買主には違約金を請求する訴訟を提起しましたが、その中でも手付解除を主張して争ってきました。当方は、「すでに決済日を直前に控えており、すでに履行の着手はあったのだから手付解除は許されない」と主張したところ、裁判所は当方の主張を認めて相手の主張を退け、違約金請求を認める判決を下しました。

弁護士からのアドバイス

手付を支払っている売買契約の場合、本件のように決済直前になっていきなり相手が手付解除を主張し、債務の履行を拒むことがあります。しかし、手付解除は民法上、相手当事者(条文上は「当事者の一方」となっていますが、解釈上は「解除される相手当事者」とされます)が履行に着手した場合は認められません。したがって、本件のように登記の準備や銀行との段取りが全て済んでいる段階では、認められないでしょう。

これは売主であっても買主であっても同じです。本件は買主に違約金が命じられた事案であるが、手付解除は常に認められるわけではないこと、手付解除を主張して債務の履行を拒めば多額の違約金を支払わされる可能性があることは売主となった場合でも買主となった場合でもよく念頭に置くべきです。特に不動産売買のように多額のお金が動く場合は、違約金もまた多額になることも考えられるので、なおさらよく注意する必要があります。