中古住宅販売における現状有姿と瑕疵担保(契約不適合)責任

中古住宅販売における現状有姿と瑕疵担保(契約不適合)責任

中古住宅流通の重要性

住宅はただ、大量に作ればいいというものではありません。適正な供給量を維持しないと、大規模集合住宅がスラム化するのを招くだけ。現在物件は既に余っています。良質な中古住宅を市場に乗せて,きちんとした売買のルートを築いていくことは、プロの責務とも言えます。

中古住宅流通であるが故の問題

「中古住宅を売ったら、買った人からあちこち不具合があるとクレームが来た。しかし、自分は古い家だし,現状有姿で売ったのだから,責任を追及されても困る」よくあるご相談です。

しかし、現状有姿で売ったら、何も責任をとらなくて、本当にいいのでしょうか。これとよく語られる問題に瑕疵担保責任の問題があります。これは、法的にはいろいろ難しい論争もかつてはあったのですが、現在は民法改正により契約不適合責任といわれるようになりました。中身は要するに、合意した内容のものを渡さないといけない義務と捉えておけば大丈夫です。

では、現状有姿で売ったら,何かあっても、この契約不適合責任は問われないのでしょうか。それとも・・・。一体両者の関係はどうなっているのでしょうか。

これらをきちんと踏まえて、中古住宅を販売しないと、あとでとんでもないトラブルに巻き込まれることになってしまいます。

現状有姿売買ってどういう売買?

現状有姿とは

  • 見た目のままのものを売りますよ、というだけの話

仮に、ピカピカの家とボロボロの家があったとします。定義しろって言われたらこういうふうな見た目のままですということです。現状のまま・見たままで売りますということです。

例えば、壁にクラックが入っているとか床が色あせている。別階段、外階段だったので錆びていますねっていうふうに、いわゆる予定された理想値。例えば左の家が予定された理想値だとすれば、それはそうだよね。外階段、赤錆だらけなんて予定された理想値っていうのはもうちょっと綺麗なもんですよね。だけどこの家は赤錆であんま綺麗じゃないです。だけど予定された理想値と見た目とは落差があっても、この見た目のままで売りますよと。塗り直したり貼り替えたりしませんよっていうことです。

古いなら古いなりに、味がありますねっていう世界です。そのまま売りますよ。現状有姿っていうのは言葉通り、見たまんまで売りますよと。引渡しまでに、酸性雨なんかがガンガン降れば、引渡しまでにあとなんかいろんなことがあって半年もかかったら赤錆もっと増えちゃう。それでももうそのままです。塗り直してコーティングなんかしません。このなんか一見したボロ屋のままボロ屋で売ります。これが現状有姿です。

現状有姿での売買だと、何か不都合が家にあっても責任を問わなくていいのか?

例えば、現状有姿だから雨漏りしても知りませんといえるのか。理想値とはちょっとずれていますけど、このままで売りますのでご勘弁をということなので。なんせこんなボロボロですからね。雨が降れば漏ってて当然でしょうということで責任を免れるでしょうか、という話です。

結論から言えば、責任を免れることはできません。え、こんなボロなのに。雨漏り、見るからにしそうだけど。そういう問題じゃないんです。家というのは、あくまで家ですから、住めないと意味がないのです。「家」を売った以上、通常予定されている家としての性能は見た目がぼろで、そのまま売りますよといったところで,住めないとまでは聞いていないという話になるわけです。

見た目が理想値とはちょっと違うけど、そのままで売りますよ。売るまでに錆びたらさらにそのままで売りますよっていうだけの話です。性能としての傷(瑕疵)の問題とは次元が違うのです。だから雨漏りしたら、それは責任は負うんです。

え、こんなぼろ屋を売ったのに、責任など問われても困ると、では、責任を負わないためにはどうしたらいいのでしょうか。これが瑕疵担保責任免除の特約です。

瑕疵担保責任免除の特約とは何か

定義

これは、契約時に、もし、引き渡し後に想定できない瑕疵(傷)が発生しても、その責任は負いませんよと、特約を結んでおくことをいいます。

引渡し後だから、隠れているんです。隠れた瑕疵があってそれが火をふいても、時限爆弾のように手に入れてから雨が漏ったりいろんなことが起こり始めても、それには責任を負いませんということです。

本来、どんなに古かろうと、家ですから,家を売った以上、住めないとだめな訳です。ですから,住むのに障害となる、雨漏りとか発生した場合には、直さないといけないのですね。では、特約を結べば知らないよ、といっていいのでしょうか。

これはちゃんと有効なんです。売るほうにもいろんな事情がありましてね。例えば所有者が破産者の場合、自己破産制度というのがありますよね。破産者が家を持っていると、破産財団に組み込まれて、破産財団が売るわけです。しかし、破産財団というのは破産が終われば無くなりますから、将来の瑕疵担保責任なんか負えるわけがないのです。でも、それじゃあひどいからといって免除を認めないといったら破産した人が持っていた不動産は一つも売れないですよ。そんなの困るから、もういいよ、とにかく買う、もう取り壊せばいいんだとか、手直しして自分の責任で使うとか、そういう人が買うわけです。

そういう意味で、瑕疵担保責任免除の特約というのはいろんな場面で中古住宅を有効に流通させるために機能してくるわけです。

免除特約の例外

さて、免除する特約はいいとして、それでも、本来、およそ建物っていうものの性能に着目して売っているわけですから、およそ人が住めないようなものを売りつけられてもやっぱ困るわけですよ。いくら免除特約があったっつったって、そこがあまりにもひどい場合には駄目だっていうことになっています。

  • まず例外1 知りて告げざること
    当たり前ですよね。瑕疵があるのを知ってて隠して売っちゃったっていう場合です。これはフェアではない。これは道理にかなわないですよね。買った方だって、だったらそんなの最初に言ってくれれば買わなかったよっていう話になります。いくら自分たちが責任とりようがないっつったって、だからって壊れているものを騙して隠して売ることはないだろうということです。これは非常にわかりやすいですね。
    よくあることですので、通常の売買契約書にも、普通、知ってて告げなかったことに関しては例外ですよってちゃんと書いてあると思います。そういうのをご覧になったことあると思いますけどね。これは極めて当然のことなので理解できると思います。
  • 次に例外2 業法上の制限
    宅建業法では売主が宅建業者で買主が非宅建業者の場合、免除特約は無効です。それから消費者契約法でもそうですね。売主が事業者、買主が消費者の場合、限界はあるけど全部責任免れるっていうのは駄目だということです。職業に応じた責任ぐらい負ってくださいということです。住宅販売のプロなら自分で売っておいてそれはないだろうという常識論が働いています。そうなると、遡って考えるに、免除特約っていうのはもともとがきな臭いものなので、ちゃんとそれを業としてやっている人たちは、最後まで責任をとってね。特約だから知らないよっていうのは許されませんよということで、売主が業法上の制限を受ける。あるいは消費者法の制限を受けることっていうのはあります。それはプロとして当然の責任だということです。

現状有姿売買と瑕疵担保責任免除特約の関係

これまでのお話しで、なんとなく分かってはきたと思うんですけど、現状有姿売買と瑕疵担保責任というのの理念っていうのはどう違うのか、どういう関係にあるのかというと、これは簡単にいえば、外面と内面だと思えばいいです。

現状有姿っていうのは文字通り、見た目のままですよと。瑕疵担保責任っていうのは見た目では分からない世界のことです。瑕疵担保責任はよく、隠れた瑕疵と言われてきました。新築だろうが中古だろうが、表から見たのではわからない、傷というのはあるものなのです。

現状有姿売買っていうのは、ボロボロの家を売るときに、綺麗にはしませんけどこのまま買ってねっていう、見た目の問題です。

ケーススタディ

シロアリ事件

中古住宅を買いました。購入後シロアリさんが相当住んでいると分かって、業者に直してと依頼したところ、すごい補修費用を要求されました。この場合、買主さんが頭にきているっつって損害賠償しろと。一体どんだけシロアリ業者に払ったと思ってるんだと怒るわけです。

シロアリがいるかいないかなど、普通わかりませんから、瑕疵担保責任の話になります。

しかし、売る方が、そもそもこれくらい古い家なので、シロアリぐらいいるかもとか雨漏りぐらいするだろうっていって、売る人ももうご高齢でこれ売ったらそのお金で施設へ入っちゃって責任なんか絶対果たせませんから瑕疵担保責任免除で売らせてください、という状況なのです。よくありますよね、こういうこと。全然資力も何もない。そのお金を全部使って老人ホーム入っちゃって、まったく返せません。瑕疵担保責任は無しです。危険を承知で買ってくださいっていう免除特約が付いた場合といえます。当事者さえ合意すればむろん有効です。

だからシロアリの被害でいろいろ生じたとしても、それは有効なので責任を取ることはできません。だからこのシロアリの話っていうのは隠れた瑕疵であって免除特約も有効だという典型例なので、思考を整理するには非常に分かりやすいです。

ところが、シロアリだからもう一つ面白い典型例ができるんです。瑕疵担保責任免除特約はさっき言ったように、知ってて黙っていたもの・騙したものは駄目ですよという話がありましたよね。ところがシロアリ被害については、被害の程度によっては知っていた可能性って十分あるんです。例えば、羽アリが飛ぶときっていうのは、もう終わって次に移動するときなんですね。食い散らかして。そろそろ末期にきているときらしいんです。羽アリがぶんぶん飛んでいたりすると、それを知っていれば、下手すると隠れたじゃなくて真面目に調査すれば分かったっていう可能性が非常に大きいんです。シロアリ被害って私いつも題材によくするんですけど、雨漏りみたいに魔物の話じゃないんです。人間の英知を持ってすれば結構発見できるんです。だからシロアリのことを隠れた瑕疵でよく使うときは、確かに隠れているんです。出てこないから、アリさんたちはそんなに。穴だって奥から食べてくるから分からないんです。だけど被害状況によっては隠れたにならないで済んだんじゃないかっていうこともありうるし、発見できたこともあるのです。

中古住宅販売で気をつけるべきこと

最重要理念

不動産販売において、対価的均衡をはかること、これをプロとしてどう見抜くかなんです。

適正なものを適正な価格で売る。これにつきる。

具体的に気をつけるべき方法

設備書とか仕様書とかを丁寧に作ることによって、本来内在している瑕疵を表面上で発見できる場合が多い。

目視できる、あるいは動作確認したことによって本来だったら隠れたままであった瑕疵を発見できることがある。

例えばドアを開けるときにどうも滑りが悪いと思って測ってみたら、なんかこのドアのところこういうふうになっている。あれ? なんて言ったら、ここにシロアリの巣があったとかね。だから目視と外側確認をしていくことによって内側の瑕疵の問題に気づくことがあるんです。なので設備診断、あるいは設備書、設備表、仕様書。なんかいろいろ見たんだけど私が見たのでも3、4種類あるので名前にとらわれなくていいです。なんかそういう中古住宅を売るときに現状有姿とかいうけれど、そうじゃなくて現状有姿で瑕疵担保責任って概念を1回捨てて、今どうなのだっていうことをお互いにチェックし合おうっていうことがすごい大事なんです。

このシャッターはガーって上げていくとガポッ、ビー、ガポッ、途中で2回止まりますとかね。だけど、もうなんで止まるかが分かんないのでこのまま売りますとか、そういうことです。それはある意味、シャッター2回止まるんだけど。いやいや2回止まるって書いてあるじゃないですか。それはもう分かった上で売っているんですよ。だから瑕疵担保じゃありませんっていうことが言えると。

実は売買の現場で、お互いにはんこを取りながらチェックして歩けば分かるんですよ。だから現状有姿は見た目で、赤錆は赤錆のままですよなんていうけれど、そんなもの真面目にチェックしていけば内側の設備上の不備なんかもだいたい見えてくるんですよ。だから隠れた瑕疵っていうのは、ほんとに隠れたというのは通常人の注意力をもってしても分からないってことなので、かなり特殊なんです。っていうことは真面目にこれらを作る作業をすれば結構発見できちゃうんです。目視でき、確認できる瑕疵であれば発見しておくことです。でもそんなの見つけちゃうと値段が下がっちゃうっていいますが、いえいえ、値段下がっちゃったっていいじゃないですか。あとで瑕疵担保責任追及されたらどうせ同じことだしね。だったら対価的均衡を図るならば、安いものは安く、高いものは高く売ればいいんです。そういうことなんです。エアコンの動作確認、電気ガス設備の動作確認、壁や床の傷、塗装の状況、こういうものも目に見えるものを全部やっておく。

つまり、瑕疵を「隠れた」にしないことです。対価的均衡を図るには、思いもかけない不均衡の原因となるようなことを生まないようにする。全部把握しておく。隠れたにしちゃったことが駄目なんです。住宅の性能診断とか住宅診断とかありますよね。こういうのを緻密にやっておくことなんです。そんなことをして粗探ししたらって、粗探ししたらいいじゃないですか。買い叩きゃいいんだし、買うほうがね。売る方だったら粗探しできたら、このままですっていって、多少買い叩かれようが、あとから請求されてどうせ責任を払うくらいならそのとき終わったほうがまだいいわけです。だから安いものは安く、高いものは高く、適正額のものを適正額で売るんです。これが中古住宅販売のミソです。価値の低いものを高く売るからトラブルが起きるんです。